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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

若い詩人らしい人が三人ばかりいる。マヤコフスキー夫人かと思われる黒衣の婦人は、棺からはなれて椅子の並べられている側の壁の前に立っていた。告別の列は、そこで一層重い流れとなり、静粛に、きわめてゆるやかなすり足で棺の足もとを通過しつつ、遺骸に注目し、哀悼の表情のまま、やがて広間のむこうの出口から順々に退出するのだった。

広間の、そのような光景が目にはいった丁度そのとき、伸子のところで、二人ずつ並んで進んでいる告別者の列が、一区切りされた。

伸子は思いもかけない場所――広間の敷居を越した、棺の足もとで、停止した。停止した伸子の目のさきに、棺からぬっとはみ出すように突立っているマヤコフスキーの大きな靴の裏があった。生きていないひとのはいている靴の底をまともに見ているというのは異様な感じだった。大きな靴の底は、その不動の位置でひとしお大きく目にうつるのだった。伸子が思わず一旦そらすようにした視線をふたたび、大きな靴の裏にもどしたとき、伸子の瞳に、かすかな衝撃の色と、何かをいそいで理解しようとする表情が浮んだ。大きい大きいマヤコフスキーの黒い靴の底に、二つのへりどめ金がうちつけられて光っているのだった。