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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
おおかたの人々は、同じ時刻の九時からはじまった「文学の夕べ」とマヤコフスキーの告別式と、二つの場所の間で、その夜をくらしたのだった。告別式へ来て、伸子は列の中にやっぱり19の電車で来た若い男女の顔を見わけた。
棺の左側に高く一台の照明燈が据えられていて、そこからふりそそぐ強い光線に掠められ、伸子の目の前にあるマヤコフスキーの大きな靴底の鋲は鋭く光りつづけている。最後の最後まで、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の鋪道で磨りへらされ、みがかれていたことを語る光りかたで――。
その光るものを見つめている伸子は、眼玉がこわばって瞬きしにくいような切ない心持になって行った。ヴェルダンのドゥモン要塞で、霜枯れた叢の中に落ちている一つの金の輪――嬰児の円くした唇のように西日をうけて光っていた小さな銃口。限りなく寂しい訴えをもっているその円い小さい金の輪は、伸子の瞳のまわりに、はまりこんで、もう伸子は、戦争という文字を、その金の輪をとおしてでなければ読むことができない者となった。自分では生きることをやめてしまったマヤコフスキー。しかしソヴェトの社会とその人々の生きることをひとしおつよく肯定したマヤコフスキーの硬直した靴の裏に、なお生あるように光っている小さい鉄の三角鋲は、伸子の柔かい胸の肌に、痛みをもって、赤