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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
それにみじんもまがいなかった。彼の理論。動作。どれも世界のものだのに、たとえばローザについて、彼が、あれは素晴らしい女だった、と云うとき、山上元のそのまじりけない褒め言葉にかかわらず、どこかに、若い女である伸子の感覚が抵抗する微妙な明治初期の日本の男があった。山上元の日本語は活溌だけれども、語感は明治のものだった。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)における山上元の存在とその周囲の日本の人たち、男のひとたちにとっては、そんなことは問題にもならない仕事があり、生活感情があるわけだった。
途中から並木道へ出て、伸子は、メーデー前のまだかたい芽立ちの菩提樹の下を歩いた。ああいう人たちにとって、すべては、何とくっきりとして、ああか、こうか、とはっきりしているだろう。そして彼の七十歳という年齢にかかわらず、山上元の特徴ある三白眼や強情な顎、短兵急なものの云いぶりから独特な精気が射出されて、伸子のなかに日本の女をめざめさせ、彼の明治の男を感応させたというのは、何とおもしろいことだろう。
山上元のくるみのようなかっちりさ。パリで近く暮した蜂谷良作が、すももか何かのように思い出された。