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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
と云った。
「書かせてみたら、こんなもの、じゃ、わるいと思います」
「いや読んだよ」
小さいけれども角ばっていて強情そうな年よりの顎をつき出すようにして、山上は、例の三白眼で伸子を見た。
「何だっけ、――こっちへ来てから、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)のことを書いているのを、何かで読んだよ」
「――『文明』に出ていたんでしょうか」
「そうだ、そうだ。――結構おもしろかったよ」
伸子は、体がぽっとあつくなった。山上がよんだというモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)印象記は、伸子がモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来て最初に書いたものだった。あのころから二年以上たって、しかも現在のソヴェト生活にくらべると、伸子の印象記は、ロシアの民族性という興味にひっかかりすぎていた。そして、伸子が現在理解しているよりも一層未熟にしか、階級の問題をとらえていなかった。
しかし、山上は、その印象記については、それをよんだ、という事実以外に、こまかいことは記憶していない風だった。おおまかに、
「あんなのだって、送ってやればいい」
と云った。
「太陽のない街」