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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「それは、うれしいけれど」
「けれど、どうなんだ」
「あんまり思いがけないから」
「まさか、親に相談しなくちゃならないわけでもないんだろう?」
このままモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)に居ついてしまうということは、形の変った亡命だった。佐々の両親に、何を相談するべきことであるだろう。
「そんなら、きみのはらひとつじゃないか」
「わたしは、こっちにいてしまってもいいけれど、仕事がわからないんです」
伸子の心は、山上元がモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)にとどまるようにと云った瞬間から、もう九分どおり決ってしまったようなものだった。伸子が、最後の一分でわからないでいるのは、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)に止ったとして、それからの伸子がするべき仕事は何かという実際上の問題だった。伸子は、年齢にくらべると、早くから文学上の仕事で働き、それで生活しつづけて来た。
「何も心配することはない。きみの能力ですることはいくらもある。ありすぎるぐらいだ。いくらいい小説を書いたって、日本じゃせいぜい千単位なのにくらべりゃ、こっちで、十万部読まれた方が、どんなに作家としたって気持がいいかしれなかろう。