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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
凱旋門のどっしりとした内壁の中央の地上には、ヨーロッパ大戦の無名戦士の墓があった。昼も夜も、そこは無名戦士に捧げられた一つの燈が燃えつづけ、墓の左右に一人ずつ今も当番の兵が立っていた。エトワールのこの光景は、グラン・ブル※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ールの生に飽和した雰囲気に対して、きわめて独特な効果を与えるようだった。壮重に、美しく、様式化されている無名戦士の墓の悲傷の象徴は、ブル※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ールの外国人たちに、あらわな戦争の惨禍を見せつけることはしない。生にまじる死さえ、パリでは一つの忘れがたいニュアンスであるかのように風景のうちに織りこまれている。ロンシャンの競馬場をふくむブーローニュの森に通じる公園通りは、パリでよりぬきの金もちの邸宅を街すじの左右に構えさせながら、このエトワールからはじまっているのだった。
伸子は素子とつれだって、あらかた毎日をあちら、こちらの街なかで暮した。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)がそうであったように、パリも、全く別の極点で伸子を熱中させずにおかないものをもっていた。でもそれは何なのだろう。