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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

日本の有名な真珠商のデザインが、日本の女の服装との関係もあってだろうが、いつも女の線にくっついていて、頸飾りや指環などのようなものには、線のしまりのなさと調子の鈍さが目立っていた。フランス人の趣味と日本人の趣味とは似ていると云いならわされていることへの不承知が、また伸子の心に湧きおこった。そこには、女として、日本の男への不承知の感情もひそんでいるのだったけれども、何と妙だろう――伸子は、銀灰色の絹びろうどのさざ波の上に耀やいている一個の腕環を見つめながら思った。フランスでは女がこんなに美しかるべき生物として理解されていると云っても、それは幾百万もいるフランスのどの女のことなのだろうと。

黒人の舞姫のジョセフィン・ベイカアは素晴らしい裸で、そのはだかの輝きをより甘美にするために葡萄の房の中に体をひたすそうだが、彼女にそうさせているのは香水王のコティであり、コティの財閥はフランスのファシストの親分の一人だった。パリへ来て間もないとき伸子たちはメトロのなかで、買物籠を腕に下げた黒人女とパリ女とが喧嘩をはじめて、パリの女がいきなり平手で黒人の女の頬をぶったのを目撃した。