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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
その勁さに、はじきのけられて、ディレッタントというポーズが出来るんだと思う、わたし、そういう修正は、ほしくない」
そう云って、伸子は考えていた。
「それにパリにはフランス料理のほかに妙なムソリニ式マカロニ料理だの、何とか大公式羊の焙肉(コーカサス料理の名)だのっていう料理があるでしょう。こっちの文学者のなかにだって、案外そういうものが御愛好って人もあるにちがいないのよ。わたしには、とてもその見わけがつかないもの」
伸子は肩をすくめて、
「わたしは、やっぱり、ぶきっちょうで、足くびの太いモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)からの小熊でいい」
と云った。
一九一七年以来、パリには象徴派の女詩人ギッピウスやバリモント、ブーニンその他の亡命作家がいた。もとの大公だの貴族だのと云われるグループとこれらの亡命文学者たちのして来たことは、ソヴェトの新しい社会建設への誹謗と、しつこい反革命運動しかなかった。自分からすてた故郷に対してたちきることのできない執着を、現実にたった理解へ高めるかわりに、これらの人々はあらゆる熱情や条理を失った猜疑や怨み憎みに表現していた。