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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「わかりましたか? サッサさん、ドゾ!」
伸子は、こまった。
「内海さん、よく説明して頂戴よ。わたしは生れつきほんとにお酒がのめないたちなんだからって――でも、十分陽気にはなれますから安心して下さいって……」
内海がそれをつたえると、ポリニャークは、
「残念なことだ」
ほんとに残念そうに赫っぽい髪がポヤポヤ生えた大きい頭をふった。そのいきさつをほほ笑みながら見ていた夫人が伸子たちにむかって、
「わたしもお酒はよわいんです」
と云った。
「でもレモンを入れたのは、軽いですよ。いい匂いがするでしょう?」
そう云われてみると、そのテーブルの上には同じ様に透明なウォツカのガラス瓶が幾本もあるなかに、レモンの黄色い皮を刻みこんだのが二本あって、伸子たちの分はその瓶からつがれたのだった。
素子は気持よさそうに温い顔色になって、
「ウォツカもこうしてレモンを入れると、なかなか口当りがいい」
のこりの半分も遂にあけた。
「ブラボー! ブラボー!」
ポリニャークが賞讚して、素子の杯を新しくみたした。
「ごらんなさい。あなたのお友達は勇敢ですよ」
「仕方がないわ。わたしは駄目なんです」