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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「そうそう、御亭主に何だか云いつけてたね」
それは半月ばかり前のことであった。伸子たち二人が秋山宇一のところにいたら、そこへ、シベリア風のきれいな馴鹿の毛皮外套を着て、垂れの長い極地防寒帽をかぶったグットネルが入って来た。まだ二十三四歳のグットネルはメイエルホリドの演出助手の一人であった。秋山たちが国賓として日本を出発するすこし前にグットネルが日本訪問に来たとき、彼は、メイエルホリドの演出家として紹介された。演劇人でソヴェトから来たはじめての人であったため新劇関係の人々に大いに款待され、日本でその頃最も新しい芝居として現れていた表現派の舞台を、メイエルホリドの手法に通じる斬新なものという風に語られた。秋山宇一と内海厚とは、帰国するグットネルと一緒にモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来た。そして、自然、若いグットネルがメイエルホリドの下で実際に担当している活動の範囲も、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の現実の中で理解した。それから、ずっと普通の交際をつづけているらしかった。伸子たちは、それまでに二三度秋山の室でグットネルにあったことがあった。