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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
と赤い部屋靴をはいている女主人をかえりみて、
「その間に、非常に希望する借りてを見つけなさるかもしれませんしね」
「結構ですわ」
捲毛の女主人は、社交になれたとりなしでちょっと胸をはった姿勢で椅子から立った。
「では二日のちに――」
「どうぞ――御一緒に暮せるようになったらイリーナもよろこびますわ」
入口のドアがしずかに、しかしかたく、三人のうしろでしまった。三人はしばらく黙ったまま、人通りのない古風なブロンナヤの通りを並木道の方へ歩いた。
「ああいう女のひとにとって一七年はどういう意味をもっているんでしょうねえ」
マリア・グレゴーリエヴナは、黒い毛皮のついた、いくらか古びの目立つ海老茶色の外套の肩をすくめるようにした。
「モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の舞台にあらわれるああいう女のひとのタイプは、誇張されているんじゃないということがわかりました。――そう思うでしょう?」
ブロンナヤの通りを出はずれて二股になったところで素子が雪の鋪道に足をとめた。
「ここまで来たんだから、ちょっと大使館へよって手紙見て行こうか」
部屋を見に行った家の裏がわぐらいのところが、丁度大使館の見当だった。