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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

二日たった。ブロンナヤ通りの貸室の女主人に返事をする約束の日になった。

「ぶこちゃん、行ってことわっといでよ」

朝の茶がすんだとき、素子が、テーブルの上を片づけている伸子に云った。

「家具の条件で?」

「――そうだろう? ぶこちゃんだって家具なんか買えないって云ってたんじゃないか」

「わたしにうまく云えるかしら――言葉の点で……」

「平気じゃないか。結局ことわるって意味さえ通じればそれでいいんだから……」

その間に素子が机のところで、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)夕刊に出す求室広告をかいた。部屋の求め主を二人の外国女と書いた。

「大体こんなところでいいだろう?」

二人の外国女などとかいたら、また経済能力を買いかぶられて、借りられもしないような条件で部屋主が手紙をよこしそうな気がした。伸子は、

「これでいいかしら……」

と、紙きれを見おろしながらためらった。

「外国女なんていうと、何だか毛皮外套でもきていそうじゃない?」

素子は、だまって二吸い三吸いタバコをふかしながら、自分の書いた文面を眺めていたが、

「いいさ、いいさ」

わきに立っている伸子の手に、草稿の紙きれを押しつけた。