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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
いま、返事を書きはじめる前にも、また二度くりかえして読んだ。そして姉さんのいうことは正しいと思う。姉さんが外国へ行って、まるでちがう生活をしていても、僕のことをこんなに考えていてくれるということがわかって、僕は、ほんとにびっくりした」
簡単に云いあらわされている文句のなかに、保が、姉・弟としての自分たちの関係について改めて感じなおしている気持が、はっきり伸子につたわった。
「姉さんが温室について書いてよこしたことは、もちろんただ僕を責めたり叱ったりしているのではない。また、温室をこしらえて下すったことを非難しているわけでもない。僕にそのことはよくわかる。姉さんは、僕に、もっとひろい社会の関係を知らそうとしただけなのだ」
伸子は、涙ぐむようになった。保の書いている調子は重々しく真面目で、そこには、姉である伸子のいうことをちゃんと理解しようとしている心が滲んでいるばかりでなく、保自身、自分のうけとりかたの正当さを、周囲に確認させようとしてつよくはりつめている意志が感じられた。保の書きぶりは、伸子のかいたあの手紙一通のために動坂の家の食堂でまきおこされた論判の光景を思いやらせた。