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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

そんなにそれは小さな室なのだった。

伸子たちこそ、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)市街地図の上でさがさなければならない一区画であったが、アストージェンカと云えば、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の人には知られている場所だった。伸子が、遠くから金色にきらめいて見える円屋根を、目じるしにして電車を降りた小高い丘の上の大寺院はフラム・フリスタ・スパシーチェリヤ(キリスト感謝寺院)とよばれていて、一八一二年、ナポレオンがモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)を敗走したあと、ロシアの勝利の記念のために建てられたものだった。ロシアじゅうから種類のちがう大理石を運びあつめてその大建造がされたこと、大円屋根が本ものの金でふかれていること、大小六つの鐘の音は特別美しく響いて聳えている鐘楼からモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の果まできこえる、ということなどでこの寺院はモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の一つの有名物らしかった。ナポレオンが、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の焼けるのをその上に立って眺めたという雀ヶ丘と、遙かに相対す位置に建てられたというから、おそらく十九世紀はじめのアストージェンカは、クレムリンの城壁を出はずれたモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)河岸