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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
に臥ているディヴァンを、それぞれ片づけていた。
そこへドアをノックして、ニューラがギリシア式の、鼻筋のとおった浅黒い顔をだした。そして、なまりのつよい発音で、
「あなたがたのところへ、お客ですよ」
と告げた。
伸子と素子とは思いがけないという表情で顔を見合わせた。誰が来たんだろう。二人はまだ起きたばかりでちゃんと衣服をつけていなかった。
「――仕様がないじゃないか!」
素子が、ロシア風に、困ったとき両手をひろげるしぐさをしてみせながらニューラに云った。
「みておくれ、私たちはまだ着物をきていないんだから……どうかニューラ、お客の名をきいて来ておくれ」
いそいで寝床のしまつをし終りながら、伸子が、
「朝っから誰なのかしら」
不思議そうに云った。もし秋山宇一なら、こんな朝のうちに来るわけはなかった。まして、気のつく内海厚がついていて、伸子たちの寝坊は知りぬいているのだから。
ニューラが戻ってきて、またドアから首をさし入れた。
「お客さんは、ミャーノってんだそうです。レーニングラードからモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へついたばかりだって」
「ミャーノ?」