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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「何だか、ひどくいい御身分のようでもあるし、えらくたよりないようでもありますね」
「そうなんです」
「そんなの、落付かないでしょう。――失敬だが、雑誌社か何かですか、金を送るってのは……」
「西片町に一人兄がいるんです。その兄が送ってよこすんですが――大した力があるわけでもないんだから、どういうことになりますか……」
そういいながら、宮野はちっとも不安そうな様子も示さないし、その兄という人物から是非金をつづけて送らせようとしている様子もない。
茶道具を片づけて台所へ出て行った伸子は、つかみどころのない疑いでいっぱいだった。どういうわけで、宮野という人が伸子たちのところへ来たのか、その目的が感じとれなかった。ただ友達になろうというなら、どうして誰かから紹介されて来なかったのだろう、たとえば大使館からでも。――大使館からでもと思うと、伸子は宮野の身辺がいっそうわからなくなった。その大使館で、伸子の住所をきいて来たと云ったって、今朝はしまっているはずなのに。――
はっきりした訪問の目的もわからずに、日本人同士というだけでちぐはぐな話をだらだらやっているうちに、一緒に正餐という時間になり、夜になったりしたら困る。