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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

伸子としては、自分が自分の頬を素子の頬にふれさせたい気持になることがあること、唇をふれ合うこともあること。そういう感情や表現を、そっくりそのまま男と女との間のことと同じとは感じていなかった。それはちがうのだもの。素子は女なのだもの。未開のままその生活からはなれたと云っても、伸子は佃と恋愛した。夫婦の生活をした。伸子にとって男と女のちがいは、自然がそれを区分しているとおりはっきりしていて、素子は男の代償という意味ではなく、どこまでも女として、友達として、しかし、そこには頬をふれる気持になるようなところのある女友達として、伸子は結ばれているのだった。

モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来て暮すようになってから、伸子と素子の生活は、駒沢にいた時分より、ずっとのびやかに、解放された。特に男たちから、伸子と素子との表面の暮しのかげに、なにか偏奇なグロテスクなものでもありそうにのぞきこまれる苦痛がなくなった。それに抵抗して、強いても二人を一組に押し出そうとするような伸子のうらがえされた恥辱感も消された。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)では、伸子たち二人が、つれだって遠い国から来ている外国の女たちだからと云うばかりではなかった。