轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
そんな前景をぬけて、楽屋へとおり、粋な細君のあおいほそおもてを見た伸子は、歌舞伎王国を綿々と流れて大幹部の細君たちの感情とまでなっている古い格式やしきたりを、理解できるように感じた。白粉の匂いや薄べりの上にそろえられている衣裳。のんきそうで、実ははりつめられている癇が皮膚にあたるようなせまい楽屋のなかで、伸子は何を話していいかわからないで黙っていた。
手もちぶさたでぎこちない伸子にひきかえ、黙ってタバコをふかしているそのおちつき工合にも素子は、楽屋馴れしてみえた。
ひいきがいう調子で、素子は中館に、
「吉之助、いくつです?」
ときいた。
「八ぐらいじゃないんですか」
「これからってとこだな」
「――吉ちゃんは、あれで考えてますからね、ここまで出て来たってことだけでも、歌舞伎俳優としちゃ謂わば千載一遇のことなんだから、おめおめかえっちゃいられないって気もあるでしょう」
吉之助のことを云っている中館公一郎の言葉の底に、計らず中館自身の映画監督としての気がまえが感じとられ、わきできいている伸子はひきつけられた。中館公一郎は、日本の映画監督のなかでは最も期待されている一人だった。