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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
伸子は自分の内にきこえる響に導かれて、もっと、もっととソヴェト生活にはまりこんで行こうとしているのであった。
ルケアーノフの主婦が伸子たちの正餐をひきうけてもよいときめたのと、素子が、パッサージ・ホテルに部屋をとったのとが同じ四日目のことだった。
「惜しいな、折角そういうのに――」
丁度パッサージに部屋をきめて帰ったばかりの素子が、部屋にのこっていた伸子からその話をきいて残念がった。
「――でも、これじゃ、とてもやってかれないし……ぶこちゃんだってそうだろう?」
伸子は黒っぽい粗末な毛布のかかったベッドの上に坐っていた。
「無理ね。ほんとに一人分だわ、この部屋は」
「正餐だけたべにこっちへ来ることにするか」
パッサージ・ホテルとアストージェンカは近いけれども、素子は往復の時間が惜しいらしかった。
「ついおっくうになっちゃうからね、いまの天気じゃ。こっちで正餐をたべりゃ、ついどうしたってこっちで夜まで暇つぶししちゃう」
「わたしがパッサージへ行ったら? 暇つぶししないの?」
「いいさ、おっぱらっちゃうもの」
笑いもしないでそう云いながら考えていて、素子はやっぱり予定どおり自分だけパッサージに移ることにした。