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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「さあ、もう十分だ。お茶をのんで、帰るんです」
茶をのみながら伸子はそろそろ自分のかえる時間も気になりはじめた。
「何時ごろかしら」
素子が腕時計を見た。
「おや、もうこんなかい」
間もなく十二時になろうとしているところだった。
伸子はピオニェールのなりをした少年とつれ立ってパッサージ・ホテルを出た。トゥウェルスカヤ通りを、猟人広場の方へおりた。
「アストージェンカへは、ストラスナーヤからも行けますよ」
「知ってるわ」
「ストラスナーヤから行きましょうよ。――いやですか?」
「わたしには遠まわりする必要がないのよ」
ストラスナーヤ広場は、夜のモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の繁華なところとされているかわり、いろんなことのある場所としても知られていた。伸子は、ストラスナーヤをまわって行こうと云った少年の言葉を自然にきけなかった。足早に猟人広場の停留場へ行こうとして、伸子は雪のつもったごろた石の間で防寒靴をすべらせた。
「気をつけなさい!」
ピオニェールは大人らしく叫んで伸子の腕をささえた。そして、彼が支えた方の手にもっていて、すべったとき伸子がそれをおとしそうにした茶色の小型ハンド・バッグを、