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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

そして、

「きょうは、すこし早めにひきあげるよ」

と、腕時計を見た。

「河井さんの奥さんとスケートに行く約束してあるから」

「そりゃいいわ。是非おやんなさいよ、奥さんはすべれるの?」

「四年めだっていうんだから、すこしゃすべれるんだろう」

二人のスケート靴を買ったばかりで伸子は入院してしまったのだった。

「はじめ眼鏡はずして練習しないとだめよ、きっと。ころぶのをこわがってるといつまでもうまくなれないから。――どこでやるの?」

「どっか大使館の近くにあるんだとさ、専用のスケート場が……」

「――そんなところでないとこでやればいいのに……」

伸子はいかにも不服げな声を出した。専用スケート場と云えば、リンクのまわりが板囲いか何かで、一般のモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)人は入れないにちがいなかった。

「いっそモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)河ででもやればいいのに」

快活な冬のスポーツにさえ、専用のかこった場所をもっている外交官生活というものが、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)という場所柄伸子にはひときわ普通でなく感じられた。伸子は、自分がこうやってねている病院が、あたりまえの大学附属病院で、いろんな女が入院しているのをよかったと思った。