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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
ナターシャは第二モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)大学の医科のラブ・ファク(労働者科)の学生なのだった。
伸子の頭から新しい病衣を着せかけながらナターシャは、
「どうやらこうやらね」
と答えた。
「できないのが一題あるけれど、それはかまわないんです」
「あなたお風呂へ入ってからいつも学校へ行くけれど、それで風邪をひかないの」
「いいえ。お風呂はわたしのためにいいんです」
伸子の治療のため、毎日午後湯がわかされるようになってから姙娠七ヵ月の彼女は医局から許可されて、伸子のあと自分も入浴するようになった。それから正餐をすませ、彼女は晩の六時から十一時まで大学へ通って勉強している。
湯あがりの伸子がすき間風にあたらないように、ショールと毛布ですっかりくるんで、ナターシャは車椅子を押し、病室へもどった。いない間に病室のドアのすきから病棟に飼われている猫が入って来ていた。猫は枕もとのテーブルの上へのり、おとなしく、しかも熱中した様子で、テーブルの上にあるアスパラガスに似た鉢植の房々した青い葉っぱを引っぱってはたべている。伸子は猫にかまわず器用に車椅子からベッドへ移って横たわった。