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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
すべてが二人にとって、特に伸子にとって受けみな、追いこまれた状態になってしまわないためには。――
伸子は一生懸命に起り得るあれやこれやの条件を考え、それについて素子に相談し、最後に一つの決定をした。それは伸子たちが、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)から出て行って、フランスでうちのものと合流する、という方法だった。
「たしかに、それも一つの方法かもしれない」
素子もその計画に不賛成でなかった。
「わたし、そうするのが一番いいと思う。どうせわたしたちだって、いずれフランスやドイツは見ようと思っているんだし、ね、そうきめましょう、ね。――どうかそうきめて頂戴」
伸子は肝臓の手術をうけようと思っていなかった。なお相談しているうちに、伸子は、いつだったかフロムゴリド教授が云った言葉を思い出した。肝臓に炭酸泉がきくということを。フロムゴリド教授は、真白い診察着の膝に、うす赤く清潔に洗われた手をドイツ流な肱のはりかたでおいて、鼻眼鏡をきらめかせながら、身についている鼻声で、日本には豊富な温泉があることをきいていると言った。そのとき、炭酸泉の温浴は、肝臓のためのすばらしい治療だと言った。