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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
十六
そして、目がさめたとき、伸子はテーブルの青い薬箱の下から、もう一度電報をとり出して、読みかえした。雪崩がおちかかるように感じられた驚きと不安がすぎ、伸子たちとしての処置の第一段を一応きめたのちの感情でしずかに電報を読んでいると、伸子の心には午前中感じるゆとりのなかったいくつものことについて思われて来た。
日本の中流の家庭で、一家五人のものが、どういう事情にせよ外国にいるその家族の一人に会いに出かけて来るということは、例のすくないことだった。あたりまえにはない佐々のうちのもののやりかただが、それをいきなり自分をさらいに来るためばかりのように警戒の心でだけうけとった自分を、伸子はわるかったと思いはじめた。伸子の病気が一つの大きいきっかけになっているにしろ、折角みんながそれだけの決心をして出かけるからには、父の泰造として二十年ぶりのロンドンも再び見る機会を期待しているだろうし、多計代にしろ、一度西洋を見たいという希望は随分昔からのものだった。視力が弱っていると言えば、多計代が今のうちに外国へ行ってみたく思うのは当然だとも思われた。保が死んで、多計代には夫だのほかの子供たちとはまったくちがった存在として神格化された「彼」