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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
それは二月五日の日づけだった。二つの日づけをみくらべて、伸子は、ものすごいスピードだと思った。たった二週間たらずのうちに、田舎の家へ行くさえも一騒動の多計代がこれだけのことをきめてしまった。いかにも多計代らしい一図さ。情熱的な強引。動坂のうちににわかにまきおこされた旋風状態が察しられるようだった。間に、和一郎と小枝の結婚式までさしはさまれて。
でも、その和一郎と小枝との結婚について、新しく着いた多計代の手紙の上にあらわされている感情は、期待とちがう沈静、冷淡とさえうけとれる調子で伸子を意外に思わせた。このたびいよいよわれわれ外国行につき、和一郎と小枝の法律上の手続が必要になったから、来月十四日を吉辰として挙式のことに決定。母親のこころは、はかりしれない慈愛をもってこの若い二人の前途を祝福しようと、それぞれ準備中です、とかかれていた。この調子は事務的だった。どことなし、われわれ外国行につき、必要だということが主眼で和一郎と小枝の結婚式は行われることのような感じを与える。「ああ、でもこの母が、出入りのものの祝儀の言葉に何げなくほほ笑んでいる、その胸のうちを何人がわかってくれるでしょう。