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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

あなたは、これまでいつも何をするんだって、誰かに手つだってもらってばかりして来たんですものね、と。

もう一週間ばかりで伸子が退院するときまったころ、噂されていた泰造の友人の吉沢博士がジェネ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の国際連盟の会議へ出席するためにシベリア経由で来てモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ数時間たちよった。その短い時間に素子が吉沢博士に会って、伸子の経過を話し伸子に加えられた治療について報告した。

「そりゃ、もうそこでおちついているんでしょうな」

というのが吉沢博士の意見だった。

「手あても、これ以上の方法はどこにいたってないんだとさ。日本へかえって一ヵ月も温泉へ行けば、ケロッとしてしまうだろうって話しだったよ」

そう素子がつたえた。伸子は、

「日本へかえって温泉へ行くって?……」

たちまち不安そうにした。

「わたしたち、逆へ行こうとしているんじゃないの」

「日本へ帰ったらば、ということさね。おっかさんは、吉沢さんに電報をうつようにたのんでるんだそうだ。君の様子しだいで、あっちがたつかどうかをきめるわけになってるらしいよ」

訊くような眼つきで伸子はそういう素子の顔を見た。