轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
それはじきやんだ。狭い穢いその町すじ全体に貧困と人口過剰と漠然として絶間ない不安がのしかかっているようで、馬の足なみにまかせてごろた石の上に蹄の音をたてながら通ってゆく伸子たちの馬車は大きな塵芥すて場のわきにあるような一種のにおいにつつまれた。そこは、ワルシャワの旧市街とよばれ、昔からユダヤ人の住んでいる一廓だった。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ではユダヤ劇場があり、トゥウェルスカヤの角から芸術座へ曲るところに大きい清潔なユダヤ料理店があった。伸子と素子とは、ときどきそこで一風かわった魚料理だの揚ものだのをたべた。そこの店では、いつもこざっぱりとした身じまいの女が給仕した。
ワルシャワのここではその不潔で古い町すじに密集して建っている建物のすき間というすき間に、その内部にぎっしりつまって生きている不幸な老若子供よりもっとどっさりの南京虫が棲息していることはたしかだった。幌をあげた馬車の上から、通りの左右に惨めさを眺めて行く伸子の顔に苦しく悲しい色が濃くなった。現代になっても、こんなに根ぶかく、血なまぐさくユダヤに対する偏見がのこっていることは、ヨーロッパ文明の暗さとしか伸子に思えなかった。