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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
また、素子は二年なら二年という限られた時の間に、来ただけのことはあるという語学者としての収穫をためようともしているのだった。そういう緊張した素子の神経のかたわらに、対外的に課せられている責任をちっとも持たず、自然に、気質のままに、ひろがったり、流れたりしてあらゆるものを吸収しようとしている伸子がいることは、素子を時々はいらだたせるのかもしれない。伸子はそうも思った。
いま暮しているように暮さないで、どう生活するかとそうきかれれば伸子に分らなかった。けれども、伸子の暮しかたは、素子の生活計画と平行して、では伸子の方はこういう風に、と考えられ、きめられ、そこで始っているものではなかった。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の二十四時間に素子が素子としての線を一本つよくひいた。その線にかち合わないところ、外側のところ、あまったところをひとりでに縫うようにして、伸子のモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)生活の細目は、はじまっているのだった。伸子がそういう工合に生活している。そのことは、そんなに全く素子の意識にのぼらないわけのことなのだろうか。