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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

ないでしょうと思います」

四十分あまり、変化をもって話しつづけて来た伸子は、そこで絶句した。ナターシャのことまで話して来るうちに、伸子の心にいろいろの思いが湧いた。めいめいが偉くなることを目的としているような従来の医学の道について、その本質をくつがえす一言を呈したい気持になって来た。

頭上から強い光をうけているせいで断髪の頭や、ゆるやかな頸から肩への輪廓が緊ってなお小柄に見える伸子は、影を絨毯の上におとしながら、首をかしげてちょっとの間黙って考えていた。適切な表現が見つからなかった伸子は実感のままを率直に、

「わたくしが最もつよく感じたのは、ソヴェトで医学は、ほんとにすべての人の生活をまもるために役立てられようとしているということです。もちろんまだいろいろ不備な点はあって、たとえば、歯医者が下手で痛いという漫画が出たりもして居りますけれど、それにしろ、医学は、どんどん生活のなかへ普及して居ります。すべての国で医学が、そういう本来の働きを発揮できるように、お医者さまというものが、ほんとに苦しんでいる人間の燈台となれるように、そういう社会がつくられてゆくことが、医学の側からも求められていいのだと思います」