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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
彼女は半ばその半白の髭の人に向い、半ばその席にいあわせるすべての人に向って、
「ちょっと、ひとこと追加させていただきます」
椅子にかけたまま、にぎりあわせた両手をテーブルの上において云い足した。
「みなさまは、いつも専門的な言葉でばかり話される報告に馴れていらしって、わたしのように、あたりまえの言葉で毎日の生活の中から話す話は、よっぽど、おききになりにくかったんだろうと思います。さもなければ、失礼でございますが、ただいまの御質問ね」
と、伸子はさっきから、伸子の話が与えた印象をつき崩そうとしている父親のような年配の半白の髭の人に向って、云った。
「ああいう御質問は出なかったんじゃないでしょうか。――ああいう御質問いただくと、なんだか、わたしのお話したことを、どこできいて頂いていたのか、わからないみたいで……」
控えめだがおさえきれない笑いがカミンのわきにかたまっている人々の間から湧いた。それはテーブルのぐるりまで波及した。
「どっちみち、みなさまソヴェトの様子は御自分でじかに見ていらっしゃるのが一番いいんです」
伸子は、本気で他意なくみなにそれをすすめた。