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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
――われながら見ちゃいられないなんてことになったら、参っちゃうと思って」
「案外なんだろうと思うな」
モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)で公開された一つの日本映画について、素子が話した。日本のプロレタリア作家の作品から脚色されたもので、孤児の娘が、孤児院の冷酷な生活にたえかねて、遂にはその孤児院へ放火し、発狂してゆく悲劇であった。
「娘が逃げ出しても逃げ出しても警察につかまってひきもどされて、益々ひどい扱いをうけてゆく過程なんかリアルでしたがね。わたしは芸術的にそれほどいい作品だとは思えなかった。でも、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)じゃ好評でしたよ」
「ああ、ありゃわかるんだ」
「テーマでわかって行くんだ」
中館公一郎と川瀬勇が同時に、互の言葉でぶつかりあった。
「ああいうテーマは、国際的なんでね。――あれは、これまでの日本映画の空虚さを、ああいう国際的なテーマへまでひきずり出したところに意味があったんだ」
そう云えば、伸子が思い出しても、「何が彼女をそうさせたか」というその悲劇の手法は、ドイツ映画の重さ、暗さを追ったものだった。
「中館さんの、それ、何ていう題?」