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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

やグロスの漫画が、しんからそれらの人々の生活感情の底から生れているものと思えなかった。こういう人たちも、もちろん、ああいう芝居を見たり絵を見たりはしているだろう。そして、痛快がり、面白がりもしているかもしれない。けれども、それは気持の一部でのことで、あとのより多くの部分はどんなところに日常の流れをもっているのだろうか。

「赤い地区」ウェディング、ノイケルンはメーデー以来大きく浮びあがっているけれども、伸子や素子がベルリンでのこまかいありふれた日々の間にふれている場面のなかへまでは、新しく創られた生活の道がしみ出していなかった。それはそれがあるところにあるだけだった。

ベルリンのプロレタリアートは、津山進治郎のいう「モルトケの戦法」で、経済の上にも法律の上にも、分れて進み合してうつ「新興ドイツ」のしめつけにあっていて、それをふんまえながら軍国主義のボイラーへはますます燃料がつぎこまれている。ロート・フロント! ロート・フロント! 用意はいいか! それは反抗の叫びであり、抵抗の唸りであり、帝国主義に向ってつき上げられているつよい拳だった。けれども。伸子はそこに双方のゆずらない対立を見出すだけだった。