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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

小枝は、ちょっと居場所のないような身のこなしをしたが、

「おかあさま、お召をそろえましょうか」

つとめて、話題をかえるように云った。

「どれをだしましょう」

「そうねえ、夕方までは、どうせどこへも出ないんだから何でもいいけれど。――あの裏葉色の裾模様はどこに入れたっけ」

「さあ。――船で召さなかった新しい方のでしょう?」

小枝はこまったように、

「大トランクの方だったように思いますけれど――見ましょう」

大トランクというのは、控間の方に置いてある鋲うちの入れものの方だった。

伸子は、小枝について控間に出て行った。そして、正直に自分でトランクの鍵をあけようとする小枝をとめて、大きい声で、

「和一郎さん、ちょっと来て」

とよんだ。

「鍵がうまくまわらない」

和一郎が来て、トランクの鍵はもとよりすぐあいた。伸子は、多計代にきこえない小声で和一郎に云った。

「あなたまで不機嫌にしていちゃ、小枝ちゃんはどうしていいかわかりゃしないことよ。――出かけなさい。ひきうけるから。――いい?」

和一郎は、

「うん」

と云った。

「夕方ちょっとかえっていらっしゃいね。そして、おかあさまたちを送り出してから、みんなで夕飯に出かけましょう」