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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

オートバイのときだって。ヴィクターのときだって。和一郎さんは、ねだって成功して来ているのよ。小枝ちゃんと結婚したい、とあのひとが云ったときお母様は、すきな結婚をするなら、何でも自分でやれ、とおっしゃったかしら。――そうじゃなかったろうと思うんです」

ありのままを、ありのままに話しているうちに、伸子は、和一郎が総領息子として子供のときから母親との関係のうちにつみ重ねて来ている特権のようなものを、はっきり目の前に見た。それは、同じ総領と云っても娘である伸子と母との間にあったものとは全くちがった性質のものだった。そして、伸子の知らない一年半のうちに、保が死に、和一郎が結婚したという新しい事情は、金の話に、これまでの佐々の家庭には無かった一種の複雑さを与えてあらわれるようになって来ているのだった。次々とそれらが明瞭になって来て、伸子は、こういう種類の問題で、一家のうちの「娘」である自分のおかれている立場というものが、はじめて客観的にのみこめたのだった。

「お母様は、これまでの習慣で、何でもわたしをひっくるめておっしゃるけれど、こういう問題では、わたしは自然第三者的な立場なのよ。