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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

アルブケルケのマラッカ征服がヨーロッパに与えた印象は非常なものであった。殊にそれは一五一三年にマノエル王がローマに送った盛大な使節の行列によって高められた。インドからの象や豹などもつれて行った。一五一四年三月にいよいよローマに入った時には、祝砲が町中に轟き、教皇が宮殿の窓に現われて行列を迎える。象は三度跪いて敬礼する。黒山のようにたかっている群集があっけに取られる。翌日の謁見式に於てはポルトガルの使節がインド征服に関する華かな演説を行い、アルブケルケの武功をほめたたえた。インドに於ける勝利は信仰の勝利なのである。今や十字軍は遙かなる東方に進出し、ポルトガルの武力によってキリスト教をかかる遠い地方にまで拡め得るに至った。これがアルブケルケの功績として承認せられたところなのである。この時が彼の名声の絶頂であったと云ってよいであろう。

しかし本国では何故にインドの総司令官がゴアを保持するために多くの血と金とを費しているかを理解しなかった。それにはアルブケルケの反対者の流布した噂もあずかって力があった。ゴアは不健康地である。それを維持するには無駄な金がかかるのみならずインド諸王との絶えざる紛争をひき起す。