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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
三 安土宗論
しかし幸いにも信長の報いるところは非常に寛大であった。彼はダリヨのために命乞いするものの言葉に耳を傾け、彼のために肉親の犠牲を辞せなかった右近のためを思うて、ダリヨの死刑を取りとめ、幽閉するに止めたのである。やがて彼は右近の許に使者を送って、ダリヨの放免を伝えた。ダリヨは死刑に処すべきものであるが、右近に対する愛のためにその刑を免ずる。目下幽閉中の牢を出て妻と共に暮らしてよい。両人には生活の資を与える。宥免状は夫の許に赴く妻に持たせてやろう、というのであった。こうして高山ダリヨは越前の柴田勝家に預けられ、同地で直ぐに福音伝道の仕事を始めた。
高山右近も高槻城主に復せられたのみならず、前の二倍の領地を与えられた。その子や妹も無事であった。一五八〇年には、その領内のキリシタンは一万四千に達した。高山家には反って繁栄が来たのである。
三 安土宗論
荒木村重に対する長期の攻囲が行われた一五七九年には、もう一つ世間の耳目を聳動する事件が起った。それは安土宗論として知られているものである。初めは法華宗と浄土宗との間の喧嘩に過ぎなかったのであるが、信長はその機会を巧みに利用して、手ひどく法華宗の迫害を断行したのであった。