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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

いつのまにか谷からモヤがあがり、山々が暗く紫にたそがれて、ヒグラシがなきだす、これが私の記憶に沁み残っている夏の山の日暮れのダンドリであるが、まだヒグラシはなく時期にならない。

付近一帯の地図の画像

さすがに内海は疲れきって、日頃にまして顔色が白々と苦しげだから、ピカ一が、

「おい、セムシの先生、オレが押してやるから、大八車にのれよ。棺桶の帰り車だが、エンギをかつぐこともなかろう。老少不定、酔生夢死、まったく、貴公なんぞがこの御老齢まで生き延びるとは造化の妙という奴だ。サア乗ったり、乗ったり」

「妖怪変化は長生きのものさ。遠慮なく乗っけて貰うか」

内海が大八車にノコノコのっかると百姓が、車をひいて動きだす。ピカ一があとを押して車は威勢よく谷の道を登って行った。

つづいて僧侶の一団と一馬と神山東洋が一とかたまりに先に立ち、丹後弓彦、小六、木ベエ、それに巨勢博士と私が一とかたまりに、ぶらぶら歩いていた。

とつぜん弓彦が例の皮肉な顔で私たちを見廻して、

「珠緒さんのことは知らないが、この四人の誰かが王仁を殺したんじゃないのかね。巨勢君をのぞいて、ね」

冷静な木ベエはフンとも言わず知らぬ顔の木ベエで歩いているが、馬鹿正直の人見小六がやや荒い息づかいで、