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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

老夫婦は夜の便所は便器で間に合わしているということであった。

私たちは、みな酔っていた。ピカ一も珍しく大量に飲み、内海まで、かなりビールのコップを重ねている。殺人事件の当夜のつどいは、神経的に、なんとなく鋭く、苦痛になるのも仕方がない。誰かしら人殺しがまじっているということが、何かにつけて、チクリと意識に上るのが、不快なのである。

木ベエはふだん酒を飲まないタチだが、たまたま酔うとシツコクからむ奴で、先刻からだいぶ丹後にからんでいたが、どうした風向きだか、やにわに鋒先を海老塚にむけて、

「気むずかし屋の名医先生。ちょいと、君、ここへ掛けませんか。ふん、イヤかね。よかろう。君は我々を気違いと解せられる由、ひそかに承っているが、僕の見るところ、気違いはまさしく、君だね」

「ヒヤヒヤ。名言、名言」

ピカ一は大よろこびで、一同を制し、

「謹聴謹聴」

「僕は人のスキャンダルをあばきたてるのは、キライなのだが、君の場合だけは、この慎しみを適用したくなくなったね。君は我々文人の私行をヒンセキの御様子だが、君自身は釣殿なるところへ御宿泊で毎晩なにがし嬢とゴジッコンの由じゃないか。