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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

あやかさんの話になると、まったく苛々するのであった。

けれども、そんな話の途中に、偶然一馬とあやかさんが私を訪ねてやってきた。

「あら、加代子さん、珍らしい」

あやかさんは目をクリクリ、花粉がとびたつように喜んで、

「今晩の食卓はたのしいわ。加代子さんは香気の高い高山植物のようだから、そッと坐ってらして下さるだけで、自然に花のありかが皆様にしみ渡るでしょう」

加代子さんはそのお世辞に反撥をあらわして、うるさそうな素振りを示すかと思うと、そうじゃない。嬉しそうにニッコリして、

「お姉さまこそ花束のようにかぐわしいのに」

まるでシンからあやかさんの花やかさに見とれるようにウットリと言うのであった。

私はまさしく呆気にとられた。女というものは、こんな生一本の潔癖そのものの娘まで、みんな天性のウソツキ、外交家、処世家なのである。それにしても、加代子さんの場合は、特別ひどいと私は思った。

思うに加代子さんは別して孤独な人であり、友達といえば京子が一人、他の何人にもうちとけた思いをいだいていないのだから、いつも外交家的に生きておるのが自然であり、たまたま京子と一緒のおかげで、私だけが、外交家でない加代子さんの心底を知らされているわけなのだろう。