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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

妹の珠緒の奴が誘いの手紙をだしたからで、一夏うちへ泊るという。君だから恥を打開けてお話するが、珠緒の奴、この春、堕胎したのだ。相手が誰ということは全然喋らないから今もって分らないが、ひと月のうち半分ぐらいはフラリと上京してどこに泊ってくるのだか、手のつけようがなくなっていたのだ。御承知の通り望月王仁という奴は、粗暴、傲慢無礼、鼻持ちならぬ奴だが、丹後弓彦の奴がうわべはイギリス型の紳士みたいに叮重で取り澄ましているけれども、こいつが又傲慢、ウヌボレだけで出来上ったような奴で、陰険なヒネクレ者でね。内海明だけは気持のスッキリしたところがあるけれども、例のセムシで姿が醜怪だから、差引なんにもならない。三人もつれて喧嘩ばかりしていやがる。珠緒の奴はそれが面白くて誘いをかけた仕事なんだよ。僕らはやりきれやしない。からんだり、睨みあったり、セムシの奴なんぞは時々立腹して食卓の皿を床に叩きつけたりね、一人の姿を見ると一人がプイと立去るという具合で、僕らのイライラ不愉快になることと云ったら、まったくもうゆっくり本を読むような心の落着きが持てないのだね。そこで誰言うとなく、いっそ昔の顔ぶれ、戦争中疎開に来ていた顔ぶれだね、一堂に会して一夏過そうじゃないか、東京は飲食店が休業だから丁度よかろう、なんてことになった。