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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

京子はN町へ買い物に行って、ついでに昔の知り人を訪ねてくると云って早朝に出発した。

私が九時ごろ、鉱泉宿へでかけようとすると、

「ちょッと、矢代さん」

あやかさんが、私を認めて、よびとめて、目をかがやかせた。

「今日こそ鉱泉へはいるわ。つれてって」

「今日は日曜だから、又、混雑するかも知れませんよ」

「あら、日曜なんかで、混雑すること、ありませんのよ。山奥ですもの」

まったく、そうかも知れない。先日も鉱泉へはいってみたいと云って、私についてきたが、その日に限って案外の混雑で、私も少々うるさくて仕事ができなかったぐらい、湯ブネの方はいつも人がこみあっていて、男女混浴だから、あやかさんは入浴することができなかった。都会地の温泉とちがって、こういう山奥の湯治場は、お湯だけが楽しみのお客だから、入浴しないと損みたいに、殆ど一日ゴチャゴチャ湯ブネで暮しているようなものなのである。

あやかさんは大喜びで、タオルや石ケン、一式かかえて私のあとからついてきた。

私たちがブナの森へくると、丹後弓彦がステッキをふりながら、ユカタでぶらぶら歩いている。私たちが追いつくと、私たち二人づれと、あやかさんの湯道具一式を変に興のこもった皮肉な目で眺めながら、