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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
ヒッソリ澱んでいるようだが、実はいくつもの渦があって、ここでは水泳も釣もできないのである。
和服姿の宇津木さんはこの水面に浮かび、ユラリユラリと渦の中で廻っていた。
崖の上から突き落されたものらしいが、さりとて自殺でないという証拠があるわけでもない。平地はヒデリつづきでも、山中の朝夕にはよく雨が降り、八月三日の夕方も、四日の未明も相当量の降雨をみたから、足跡なども消されて、崖の上には格闘の跡など認めるよしもなかった。
宇津木さんの屍体は翌四日の早朝発見され、警察医が出張して例の草林寺で解剖が終ったのは夕方、胃の消化情況から、だいたい食後三時間か三時間半ぐらいに殺されたものだろうということであった。
近ごろの食堂は、外出の連中が多くなって、時間も人数も極めて不規則になっている。一番バスにのるには男の足でも七時半には歌川家を出発しなければならないというようなわけで、食事はテンデンバラバラだ。
けれども、昨三日、秋子さんの朝食は私や京子も神山夫妻も胡蝶さんも一緒で、だいたい七時半前後という一同の記憶であるが、さすがの神山もこの日は自慢の時計を睨み忘れて、正確なところは分らない。