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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

傷にきくという話であるが、別に病人が湯治にきているのも見かけたことがない。かすかに特異の臭気はあるが、それも、強烈なものではない。然し、あの鉱泉の近辺だけは、この辺の名物の蚊がいないので、それだけ何かがあるのだろう。

カングリ警部は最後に私に向って昨日の動勢をたずねたが、私はあやかさんと九時ごろ家をでて、九時半ごろ鉱泉宿へつき、仕事ができなかったので、ちょっと釣糸をたれてみたり、鉱泉につかってヒルネをしたり、それからいくらか雑文をかいて夕方戻ってきたことは、すでに述べた通りである。

然し、もとより、私のハナレへは宿の者もめったに来ることがないから、私が釣のふりをして、三輪山へ行き、秋子女史を殺してくるという芸当が不可能なわけではない。カングリ警部もぬからず、そのへんはとっくに思いめぐらしている筈で、彼が特別、バスの時刻表を睨めまわしてチクチクとつついているのは、たとえば木ベエの場合などは、実際に始発のバスで行ったかどうかも明かではなく、始発で行ったにしても、引返して、秋子さんを殺しておいて町へ戻り、五時のバスで帰ってくるということも考えられるからであろう。