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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

そのとき、散歩にでかける宇津木さんにバッタリ会った筈ですね。あなたは歌川家の台所へまわって、女中の八重に、諸井看護婦をよんでこいと命じた。ところが諸井さんは先刻の話の通り、二番バスで町へ出かけております。それをきくと、あなたの顔色が変った。急にあなたは心を変えたらしく、じゃア、釣殿にいるから、下枝さんをちょッとよこしてくれと云って釣殿へ行きました」

海老塚は蒼ざめてブルブルふるえて、

「無礼者! 嘘だ!」

と叫んだが、カングリ警部はビクともせず、突き刺すように海老塚を見すくめて、目じろぎもしない。かねて命を受けていたのか、八丁鼻とヨミスギが海老塚の左右に寄り添うように立っていた。

「八重から伝言をうけた下枝さんは、何事だろうかと、さっそく釣殿へ行きました。すると、あなたは、もう聴診器をぶらさげて待っていて、お前はたしかに胸の病いの様子がある。今日は健康診断をしてあげよう、と下枝さんの手をとりました。下枝さんは、あなたの様子がただ事ではないのに恐怖を感じて、いえ、病気ではございません、それに今は、ほかに用がございますから、と答えると、急に飛びかかって押えつけて、コラ、言われた通りにしろ、さもないと、抑えつけても、ハダカにしてしまうぞ、と、やにわに接吻しようとしました」