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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
然し、カケた二つの茶碗の正確な見分け方は知らなかった。これが、一つの場合。も一つの場合は、カケ方の少い方の茶碗、つまり土居画伯のコーヒー茶碗は、犯人の予定によれば、当日は加代子さんにくばられる筈になっていた、それを給仕人の八重が、うっかり常々の習慣通り土居画伯にくばってしまった。あるいは又、犯人はかねて加代子さんのコーヒー茶碗がカケたものである筈のことを知ってはいたが、一々コーヒー茶碗をしらべる余裕がなかった。そこでトッサに目についたカケ茶碗に毒薬を投入した、というような火急の場合による手違いも有り得たろうと思われます。以上のべました通り、加代子さんがこの食堂へ現れた場合はカケたコーヒー茶碗を用いるであろうということを知っているには、この家の調理場の事情に精通しなければならない道理で、然し、元来、加代子さんの殺害を企む以上、その犯人は当家に精通したものに限られている筈であります」
私はいささか腹にすえかねて、口をだした。
「神山君の話の様子では、犯人は、歌川家の遺産問題ときまったようじゃないか。王仁や内海や宇津木さんの場合はどうなるのかね。歌川家の遺産問題が犯罪の動機とすれば、ここに十一名出席しているが、犯人たるべき人物は、幾人もおらぬ。