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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

それから近づく者に掴みかかって、土居先生が十二時半すぎるころまで、あやか夫人の寝室の前に喚きつづけておられたわけです。その時間に内海殺しが行われ、喚きつづけた土居先生をはじめ、二階の居住者にはアリバイが成り立つ、なぜなら土居先生の眼をごまかして、階下へ下りることができないから、という次第です。然し土居先生は泥酔しておられて、このテンマツに記憶がないそうですから、何者かが階下へ降りて内海さんを殺すことができたかも知れない。ここが、大いに微妙です」

「確実に犯行の不可能な人は誰でしょう?」

「それは、あやか夫人、土居画伯、御両名にきまっていますよ」

巨勢博士はうなずいた。そして一座を見渡した目は激しい気魄にあふれていた。

「皆さん。この殺人事件は、恐らく十ヶ月以前に計画せられたものでありました。恐らく犯人の一人は変装してこの土地へ旅行し、三輪山へでる間道なども充分に調査の上、極めてメンミツに計画をたてたに相違ありません。現に犯人はこの春ごろ一時ヒゲを生やしたことがあったそうですが、たぶんその期間に、この土地へ旅行し、土地の地理を充分頭に入れたものと思われます。