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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

のだそうで、まるで怒った顔付だが、御当人はそれで結構たのしいのかも知れない。

広間へ行くと、みんな揃っていて、食事の支度ができたというから、食堂へはいる。海老塚医師が遅れてきた。つづいて、宇津木秋子がモーローたるていで現れて、

「なんだか、頭が痛むわ。御飯が欲しくないのだけれども、皆さんお集りのきまった時間て、なんだか寝ていられなくなるのね」

「ゆうべ徹夜なさったの?」と、胡蝶さん。

「いいえ。眠りすぎちゃって、いまだに、ねむいのよ。山の中は眠いのかしら。ふだん生活が不規則だから、たまに規則的な生活すると、健全みたいで変にたのもしくなるのだけれど」

「悪徳高き淑女は善行を愛するもので、そのタグイですな」

とピカ一が大声で言う。

「お水だけ、いただくわ」

「御病気じゃないの?」と、あやかさん。

「うん。無芸大食の私が、食慾がなきゃ、病気かもしれないわね」

「ツワリじゃないですか」とピカ一。

「海老塚さんに診ていただくがいいさ」

と、一馬が昔の女房をいたわる。今の御亭主のモクベエはムッツリ不機嫌だが、いずれ彼等は別れるのだろう。

「あらあら。ほんとに病気にされちゃ、いやだわ」