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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「若いころから涙香などを愛読しておったが、外遊の折、つれづれに探偵小説の趣味を覚えたのです。岡倉天心が探偵小説の愛読者で、家族のものが病体をおもんぱかって思うように晩酌をくれないものだから、ドイルなどの探偵小説を一席、半分だけ語ってきかせる。佳境に入ったところで口をつぐんで、それからどうなったのですかときくと、いやいや本日はこれまでと、じらしておいて、どうじゃ、あとが聞きたければモウ一本もってきなさい。ドイルなどは、晩酌用の策戦に、ちょうど手ごろの一席になるね。近ごろの推理小説は、小味で、微妙で、いりくんでいるから、読むには確かに面白いが、晩酌の策戦には適しない」

「私も探偵小説は至って好きな方ですが、どんなものがお好きですか」

「私はイギリスの女流のアガサ・クリスチイというのが好きです。ヴァン・ダインとかクイーンとか、無役に衒学で、いやらしくジラシたり、モッタイぶったりするから、気持よく読みつづけられない。私がむかし丸善へ足を運んだのは、もっぱらこの探偵小説のためで」

老人は書架の隅から積み重ねた洋書をとりだしてみせた。みんな探偵小説だった。クロフツもあれば、「赤毛のレドメン」