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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
「日光」1948(昭和23)年9月~1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 页
必ず、逃げはぐれたこの女の為に、同類の男がなおそこらに潜伏しているものと見たのである。
捕手は、三組に分れ、荒布橋方面や、安針町、小田原町の方へも、狩立てに散って行った。そして剣助は、残る七、八名をひきつれて、
「もう一度、堀留から瀬戸物町、伊勢町なども一巡して、すぐここへ戻って来るが、その間、少しの油断もしてはならねえぞ」
と、自身番へいいのこし、大股に、立ち去った。
庄七と由は、預けられた縄付を、番屋の前の大柳の根もとへ、必要以上にまで厳重に縄を廻して縛りつけた。
――だが、それでもなお、不安な気がして、二人とも、六尺棒を立てて、油障子をうしろに、立ちッきりで番をしていた。
「おどろいたなあ、由。これが強盗のひとりたあ」
「そうよ。今までにも、何人組というなア随分あったが、女が交じっていたのは初めてだ」――下役者の常として、少し倦むと、すぐしゃべり出していた。
「だが、北のお奉行衆が、いくらこう必死に働いても、南が、ああ無能じゃ、とても江戸の悪党は、狩り尽くせめえぜ。女の悪党までが、南を甘く見て、こんな真似をしやがる程だもの」
「まあ、南ばかりを、そう悪くいうなよ。