轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
「日光」1948(昭和23)年9月~1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 页
その良人がめずらしく、今夜はおそい。
「どう遊ばしたのか」
お縫は、奥の寝間で、園子に添乳しながら、案じていた。
まだ、乳もはなれない園子には、乳母もつけてあるが、きのうから風邪ぎみで、熱もたかく、母の肌を恋しがって、離さないのである。
「――お月番でもないのに」
と、彼女は、気をもんだ。家にあっても、良人の職とする町奉行というものの重責に何か、大事が起ったと感じると、彼女の母乳の出方にもすぐひびいた。
「殿さまのお帰りでございます。――奥方様」
廊下のそとで、いつものように、女中の知らせる声がした。
お縫は、ほっとした。
園子を、乳母にあずけ、いそいで、鏡台の前へ寄ってから、迎えに出た。
駕籠をおりた越前守は、ちょうど、玄関の式台へ上っていた。
「お帰りあそばしませ」
「きょうは、ちと晩うなってな」
いつもの気色と、かわりもない。
公服を解き、風呂に入り、やがてお縫の給仕で夜食の膳につきながら、
「子どもたちは、もう寝たか」
「はい、宵のうちまで、求太郎も雪子もしきりと、お父さまをお待ちしておりましたが」
「園が、寝所で泣いておるようだの」
「きょうは、咳が出るので、むずかってばかりおります」